飛騨高山からくり人形殺人事件<赤かぶ検事シリーズ> (講談社文庫)
久々にサスペンス物でも読んでみるか・・・と思い手に取った一冊は、和久峻三「赤かぶ検事シリーズ」のひとつ。
赤かぶ検事(柊茂)といえば高山だと思っていたけど、転勤を繰り返して最近は京都にいるらしい。この「飛騨高山からくり人形殺人事件」は、松本勤務時代の話だ。1995年作品だけあって「松本から高山まで、中央道を経由すれば、四時間もあれば充分だ。」という記述に時代を感じる(当時は安房トンネル未開通)が、後はそれほど気にならない。
まずは苦笑もののタイトル。飛騨高山といえば高山祭、高山祭といえばからくり人形。そんな図式が浮かび上がってくる。そういえば「金田一少年の事件簿」にも「飛騨からくり屋敷殺人事件」というのがあった。飛騨といえばからくりですか、そうですか。
内容に関しては、タイトルと帯に書かれた「美しい人形から飛び出す殺人針!」という文章だけで想像できるだろう。その後次々と殺人事件が起きるが、死体発見場所は宇津江四十八滝、瀬戸川、中橋となかなか派手だ。地方ニュースどころか、全国ニュースのトップで扱われそうである。
当時の柊検事は松本在住という設定なためか、捜査の進捗状況を電話で聞いているだけというシーンがやたらと多い。つまり赤かぶ検事は、ほとんど何もしていないのだ。報告を聞いて感想を述べるだけ。赤かぶ検事といえば法廷ミステリーだと思っていたが、今作は何と言えばいいやら。安楽椅子系か。
耳慣れた地名が次々に出てくるので親近感はあるけど、作品としてはあんまり面白くなかった。ごくたまにしか日本のミステリー小説は読まないのだけど、その度に軽いがっかり感がある。一体俺はミステリー小説に何を求めているんだろう。トリックの推理ではなく、動機の推理に重点が置かれている所が物足りないのかもしれない。
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