たまに読みたくなるミステリー小説。今回手に取ったのは津村秀介の「飛騨の陥穽 -高山発11時19分の死者-」。
「陥穽(かんせい)」ってのは要するに落とし穴とか罠って意味だ。「長編本格推理小説」とうたってるだけあって、時刻表を使ったアリバイ崩しは読みごたえがある。序盤からいきなり作者の刷り込み戦略にはめられていたのも面白い。地元民から見れば「おいおい、そんな間違いしないだろう。」って感じだけど。
以下、ネタバレになりますので注意してください。
この小説では「高山から東京へのルート」「三之町の場所」。この二つのトリックが最終的な山場になる。
高山から東京までといったら、どんなルートを思い浮かべるだろうか。
ここでは高山から名古屋まで特急、あとは新幹線というルートだと思い込まされるが、実際には富山空港からの飛行機だった。この空路って、あんまり一般的じゃないんですかね。子供の頃に一度乗った事があるけど、アルプスの山々が見えてとても良い景観だったのを覚えている。富山空港までのアクセスがあまり良くないので、自家用車向けかも。
ちなみにこの小説の発表は1994年。当時、東海北陸道は建設途中。安房トンネルは未開通だった。ここ10数年で飛騨の交通事情がずいぶん様変わりしたのを思い知らされる。現在では東京行きの高速バスがあります。
そして「三之町」のトリック。
高山の三之町と思わせておいて、実は古川町の三之町だったりするのは地元民として笑えた。ありえんだろ。旅館の最寄駅ぐらい聞いてから実地調査に行けよ、とツッコミたくなった。
冒頭で古い街並みを歩く女性が描かれるのだが、ここからしてすでに古川町だったわけだ。読み返してみると「和蠟燭店とか提燈屋の前を横切って駅へ急ぐ。」なんて部分がある。和蠟燭店といえば古川ですねぇ。さんざん高山の観光案内をするものだから、違和感がありながらも結局騙されてしまった。作者にねじ伏せられた気分です。
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